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中国人とベトナム人
 私が一時期住んでいた家の近所に、中国人(と言っても彼らは台湾人なんだけど)家族とあるきっかけで凄く親しくなったのね。その家族は、台湾ではお城のような家に住んで、事業は某スポーツウェア関係の仕事をしているというから、世界を股に掛けて仕事しているのよ。 それが、あるとき子供が父親を見て「この人誰」と言ったんですって。そのくらいお父さんは家にいないで、世界中飛び回って仕事していたのね。
 私が何でこの国に来たかと訊くと、「自分は家族を持ちたくて結婚し、家族が出来たのに、子供に顔を忘れられてしまうなんて、凄いショックだった」と言ってたのよ。事業は台湾にいる社員や他の役員がちゃんと見てると言ってるわ。
 娘がその台湾に遊びに行ったときに、お菓子折りをおみあげに持っていたのよ。そしたら彼は、その小さなお土産を、大家族のみんなに分けるだけではなく、従業員にも分けて、ほんのひとかけらづつ多勢で食べたんだそうなのね。
その事を彼に「素晴らしい心だ」って言ったことがあるの。そしたら彼は「みんなに優しくするし、みんなを助けるし、みんなで分け合う。それを出来なければ、一人前の男子としての能力が無いじゃないか」って言ったのね。
 そして彼は「本国の中国人はもっと助け合いの心を持ってるよ。長い戦争の歴史の中で、助け合う心がなかったら、民族は滅びているだろう」とも言ったの。
 分け合うと言うことは、量や数ではないのよね。ほんのひとつまみでもみんなで分けようとする「心」「気持ち」なのよ。だから中国人は何処の国に行っても、その国でちゃんと根を張って生きて行かれるのじゃないかしらね。
 この国には同じアジア人である、ベトナム人が凄く多いのね。ベトナム戦争の時に難民を受け入れた所為なのでしょう。このベトナム人も結構歴史の中で可哀相なくらい他の国から占領されて、支配されてきた民族なのよ。
 だから中国人と相通じる所があるのかなと思ったら、全然違うのね。痛められすぎて、人間がひねくれちゃったのかしら。自分の国の人には凄く優しいし、面倒見も良いのね。
 ところが、あるパン屋の話なんだけど、労働基準で決まっている賃金以下で安いアルバイトを使い、そのアルバイトの時間内で昼ご飯を食べる15分以外は椅子に座らせない。食事の最中でもお構いなしに、お客さんが来ると商いさせる。全く思いやりがないのよ。お金払ってるんだから、使うだけ使わなきゃって感じなのよ。そしてそこの旦那さんに「あなたの奥さんは凄く働き者で運が良かったね」と言ったら、彼は「だから結婚して上げたんだ、働かなきゃ離婚だよ」ですって。あれだけ働ける女性なら、一人でも充分生きて行かれるのに、牛や馬を貰うようなこと言われても、結婚というのはベトナム女性にとっては、憧れなのかしら。彼女は私がシングルだと訊いて、もの凄く同情するのよね。彼女の価値観なんでしょうけれど。
 私からすると、彼女を見ていて、立て続けに子供産まされて、鼻たれ子供を背負いながら、夜も明けない内から、最後の閉店まで、従業員にも優しくできないほど夢中で働いて、収入の管理はみんな旦那さんがするのよ。何のための結婚生活なんでしょうね。そんな風で、食料品店でもベトナム人のお店は、家族がとにかくよく働いているのよ。そして彼らは異口同音に「この国の生活は天国のようだ」って言うのね。
 中国人もベトナム人も、昔の日本人のように本当によく働くけれど、中国人はその国の人にも親切にする。ベトナム人は自分の家族でも、使えるものは遊ばせておかない。
 苦労の仕方が違うからなのか、民族的DNAの違いなのか、個人の移住者としてみたときに、その違いは結果としてかなり大きいと思うわよ。日本人も結構海外ではセコイ事している人多いのよね。日本人ももっと奉仕の精神もって欲しいわよ。
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