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領事館と大使館の裏事情
 私のいる町は、日本領事館があるのね。大使館はその国のキャピタル、要するに首都にあるだけなのね。そして私はこの国の首都には住んだことがないから、日本大使館がどのような活動をしてるのかは、直接見たことはないのよ。でも建物の側へ行って、大使公邸の大豪邸は見てきたわよ。
 日本を象徴する意味でも立派にしないと、他の国からバカにされるのかしらね。とにかく立派な建物とお庭があったわ。
 この町でも領事館の事務業務は、街のビルの中にあるのだけれど、総領事の公邸はテニスコート・プール付きの一番お金持ちが住むと言われている観光名所の中にあるわよ。
 その公邸で何が行われているかというと、有る領事は任期中に日本文化を広めるためと言って日本舞踊とか三味線とかお琴とかの演奏会を開いて、この国の日本に感心のある協会の人達を招待したりしていたのよ。領事が入れ替わると、日本から連れて来た料理長に、自分たちの為だけにご馳走を作らせて食べているのよね。
 日本に住んでいる人達は知らないと思うけれど、総領事は2年くらいが任期なのね。そして総領事が替わるたびに、ホテルの一流コックさんを指名して連れてくるわけ。それと警視庁から、キャリアと言われる警視が家族連れで随行してくる訳ね。コックさんにも家族があるわけだし、一人の総領事が動くたびに、もの凄い人数の人達が一緒に移動するわけなの。その度に彼らの家は変わるし、家具や備品も変わるのよ。その費用が全部国費、私達の税金でまかなわれてる訳なのよね。
 そしてもっと酷いのが、駐在地の高官と「親睦を図るため」に取られている予算で、そのお金を使ってゴルフをしてるだけなの。事件がないかぎり、仕事らしい仕事なんて無いわけだから、ゴルフ好きな総領事なら、プレイをするのに相手が日本の商社関係人だって、日本人会メンバーだって、構わないのね。
 そしてある時、真面目な総領事が赴任してきたのね。彼女は、ゴルフなんかしたことがないほど真面目な人だったのよ。自分でホームページ作って福祉に力入れていたし、老人問題が自分のテーマだとも言ってたのね。そんな人が、たった2年弱の任期中に、日本人駐在人からゴルフを無理矢理誘われて、ゴルフをするようになってしまった訳なの。
 ゴルフが悪いとか言ってる訳じゃないのよ。領事館はそれほど暇だって事じゃないかなって思う訳よね。
 折角外国に住んだんだから、もっとその国の合理制とか、非合理制とか、電話やゴミ処理や郵便局とか政府が運営している機関の勉強でもして欲しいわよね。日本に帰ってから自分のポジションを活用して、改革に役立てて欲しいのに。
 日本の商社に勤めていたという人が話をしていたんだけど、日本という国は官官接待、社内接待万々歳の国だって言っていたわよ。
 代議士だって、国の費用使って1年に1回は海外視察出来るらしいのね。その時に、外国は夫婦同伴が当たり前の国だからと言うわけで、当然奥様の費用も請求できる訳よ。そして奥様を本当に連れて行く人は良い方なのね。ずるい人は、奥様の費用を請求して自分だけで外国訪問して、現地で内密に領事館に現地妻なんか紹介させる訳ね。それも交際費よ。ニュースなんかで流れている公式訪問と違って、視察だから、あくまでも勉強が目的らしいのね。何処を視察して何を勉強してるのだか。外務省にはレポート出すのかしらね。レポートの内容はカジノの必勝法とゴルフのスイングの勉強だったりしてね。
 そんな風だから、あの中国領事館の北朝鮮亡命事件みたいな失態を犯すのよね。総領事になるためにはもの凄い難しい試験を受けて、針の穴を通ってきた人ばかりで、本当に優秀な人達のはずなのに、どうして何処でそんな風に成っちゃうのかしらね。
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